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かちかち山天からぼろ手まり歌お手合わせ歌お手玉歌かぞえ歌花咲かじいさん

 

かちかち山

 

 昔あるところに、じいさんとばあさんがおったげな。狸が畑のなすやきゅうりを食いよったもんで、じいさんが罠をかけに山へいった。そこへ、狸がでてきて、じいさんをせびらかしてやろう思うたところが、

「おんどりゃぁ、わりぃことばっかりしやがって、おまえにゃぁ、だまされんぞ」というて、じいさんが狸をけとばしたら、狸がひっくらかいて、死んだまねをした。

 じいさんがいくらまくらかいても(ころがしても)死んだまねをするもんだけぇ、狸をゆわえてつれて戻って、囲炉裏の上へつりさげといた。晩にゃ狸汁たあて(炊いて)、食べよういうて、じいさんは外に畑うち(畑を耕し)にいって、ばあさんは狸汁作るちゅぅんで、うちで餅をつきよった。ばあさんが、一人で餅つきよったら、たぬきが

「気の毒なけぇ、わしがてご(手伝い)してあげよう」

「ほんでも、あんま、やらんことをすうと逃げるけぇ。そがぁなことは、すりゃぁせん」

「いや、あの、わしをこっから降ろしてくれりゃぁ、ちゃんと今から、こういうわりぃことせんけぇ、許してくれ。許してくれりゃぁ、気の毒だけぇ、てごしてあげよう」

 そいから、縄をといて、許したら、こんだぁ、餅をつく振りして、ばあさんの頭をついて、ばあさんを臼にいれて、搗き殺したんだげな。

 

 そいから、じいさんが戻ったときにゃぁ、ばあさんに化けとって、殺したばあさんの肉を煮よったいうのよ。そいで、たぬきの化けたばあさんが、

「じいさん、ご苦労でした。ようかえんさった。これ、ええ汁、煮たけぇ、あんたが捕って戻った狸の汁、煮たけぇ、食べんさい」いうて、そいで、おじいさんは

「これはおいしいいたぬき汁だ。うまいなぁ」いうて吸いよったいうんだ。

 今度、ばあさんに化けたたぬきが

「うまいことじいさん、ごまかされたのう。そりゃ、お前とこのばあさんを今たたき殺して、煮たんだ」いうて、逃げた。

 

 そいからじいさんが、怒って、おわえた(おいかけた)が、たぬきは山へとんで逃げたげな。

「まぁ、せっかく捕らまえて、たぬき汁しようと思うとったんだが。ばあさんもやられて、もうどうにもならん」いうて、また畑に行って悔やみよったら、こんど兎がでてきて

「おじいさんどうしたんか」いうたら、

「いや、狸のやつめが、いっつも、畑のいたずらして困るんで、こないだ(この前)捕らまえて、狸汁して食べよう思うたら、嘘をいうて、ばあさんをだまくらかいて、殺(ころ)いて逃げてしもうた」いうて、ほんで、兎が

「そいじゃぁ、今度は私が退治してあげよう」そいで、

「豆をたくさん炒ってくれ」いうて言うた。

 

 兎が畑で、豆をバリバリバリバリ食べよったら、狸が出てきて

「その豆をくれんか」

「わしが言うことをききゃぁやる」

「うん、聞くけぇ、くれ」

「今から、たきもん取りにいくけぇ、この背負子(しょいこ)負うてくれりゃぁ、そしたら豆やる」いうた。

「ほんなら負うちゃるけぇ、その豆くれ」

 ほいから(それから)、一緒に行って、狸にたくさん焚き物かろわして(担がせて)、兎もかろうて(担いで)、ちろうて帰りよった。兎が後ろで、火打石でカッチ、カッチやりよったら

「カチカチいうたのは、なしてか」ちゅうて狸がいうた。そしたら兎が、

「カチカチ山のカチカチ鳥だ」いうて言うた。

 そして、兎が火打石で狸の背中のたきもんに火ぃつけたら、ボーボーいうて、燃え出した。

「ボーボーいうのは何か」ちゅうていうた。そしたら

「ボーボー山のボーボー鳥だ」ちゅうて、いうた。

 ほんから、そのうち背中が火事になって、狸が

「熱い、熱い」いいだしたんで、

 うさぎは、唐辛子練って、薬だ言うて、背中に塗ってやった。ところが、やけどに唐辛子つけたもんで、

「熱い、熱い」言うて、狸はそばの小川に飛び込んで、

「助けてくれ、助けてくれ」いうて言うた。

 

 兎は、自分は木の舟に乗って、狸を泥で作った舟にのせたんだが、狸のは泥舟だけぇ、どんどんどんどん、泥が溶けて、沈みだした。

「今から、絶対悪いことしませんけぇ、助けてくれ」いうたが、

 うさぎは、かいで狸をたたっころいて、じいさんと狸汁にして食べた。ちゅう話だ。

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天からぼろ

 

 子供が

「もう、もちっと長い長い話をしてくれ」とか「はなしゅうせぇ、はなしゅうせぇ」とか

「長い昔をいうてかして(聞かせて)くれ」とか言うて、おばあさんにぐずりよったで、

「おお、そりゃぁいうてかしちゃろ。あれ、長いのがええか、短いのがええか。どっちがええか」

「そりゃぁ、長いがええ」

 

「あの天からのう、なんと高い高い高い高い天からのう、長い長い長い長いぼろが下がってのう。どんどんどんどん下がってのう。何ぼ引っ張っても、引っ張っても、ちぎりゃせん。一生懸命引っ張ってもちぎれだったが、また、引っ張ったら、ちぎれて、や、ようやくちぎれたげな。長かっただろうが」

 

「ああ、ぼろの話か。あがぁじゃぁだめだぁや」

「そんなら今度は、変ったはなしをしちゃろう。

 なんと大けな大けな大けな山があってのう、その山に大けな大けな大けなかたし(椿)の木があって、そのかたしに、なんとまぁ、えっと、えっと、えっと(たくさん)花が咲いとって、その花が、ボチボチボチボチボチボチ、、、、、、、、、、、、、落ちたちゅうて」(このボチボチを長う言うて)

「それボッチリ」

「それも聞いた。あがぁんじゃぁだめだぁや」

 

「ほんじゃぁ、もう一つ」

「ひきが跳んだ。かえるが跳んだ。かえるが跳んだ。ひきが跳んだちゅうての。かえるが跳びゃぁ、ひきが跳ぶちゅうての。ひきが跳びゃぁ、かえるが跳ぶちゅうての、、、、、、、」

「それも、しっちょる」

 

「こりゃあ、どうかの、

 昔、つつみ(堤、ため池)はた(土手)に、えのき(榎)の木を植えたちゅうだぁな、その榎の木がずっと大きんなって、その榎の木にいっぱい榎の木の実がなった。それで、風がどおんと吹いてくりゃぁ、ぽちゃ、ぽちゃ、ぽちゃつと、堤の中に榎の木の実がむけて落ちる。風がどおんと吹いてくりゃぁ、榎の木の実が、ぽちゃ、ぽちゃ、ぽちゃ、堤の中に落ちてくる、、、、、、、、」

 

 (他に話がないもんだけぇね、ああいうことを繰り返し、繰り返し言うんよね)

 子供が、腹こいて、

「もう、ええ。昔をせんでもええ。話をせんでもええ。わしゃぁねる」

「おお、そうか、そうか。はようねにゃぁ、やまんばあやあまんじゃくがくるでの」

あまだ(屋根裏)にゃぁ、あまんじゃくちゅうわるいやつが、おってな、なんぼいうても寝ない子がおると、『てっ、てっ、てつぼ(鉄棒)、ちゃ、ちゃ、茶つぼ』いうて、あまだから、おりてくるけぇ」

 (これを聞くと、たいがい、子供はおそろしゅうて、ふとんかぶって寝よる)

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手まり歌

 

わしが弟の千松は  七つ八つから金(かね)堀りて、金を掘るのか死んだのか

一年たっても状がこぬ。二年たっても状がこぬ。

三年ぶりのついたちに、おとみにゃ来いとの状がきた。

おとみはやらない、わしが行く

おとみは泣く泣くついてくる。

泣いた涙は舟につむ、舟はしろがね銅こがね、たんだ押せ押せ都まで

都土産にゃ、何もろた。

一にこうがい[1]、二に鏡、三に更紗の帯もろた。

帯をもろたがまだくけぬ[2]。くけてやんない(ください)姉ごさま

くけてやるとも思えども、西も東も戦乱で、きつきりよつはり 

はりようたあ はりようた(張り合った、競争した)

 

 

手まりのはじまり  お洗いしましょ

お洗いすんだら  お着物着かえ

お着物すんだら  お歯黒つけましょ

お歯黒すんだら  帯を結ぼう

帯がすんだら    おいこしましょ

 

 

はりやい(張り合うこと)ござれソレござれ

負けたら恥ソレ恥よ

ひ、ふ、み、よ

おいまぬけしけ

おわるをながめ

てんめいうぶゆす

ホラほっきょうと

いうて鳴くのがほととぎす

昔弁慶さんばいが

よるひのくるまに参るとて

くるまの道から日が暮れて

同しようなげんざいが

むらさか盃手のせいで  

一杯あがれ足ろうぞ

二杯あがれ足ろうぞ

三杯目にゃ肴がないけぇ

あがらんぞ あがらんぞ

これよりしもの川下の

鮎ものぼれば   

鯉のぼる鯉のぼる

 

 

向こう通るはよつべじゃないか、鉄砲かついでむく犬連れて、

どこに行けるか問ぅてみれば、向こうの小山にきじ打ち行ける。

きじはけんけん 山鳥りゃほろほろ、羽を揃えて立つところ、立つところ   

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お手合わせ歌

 

青山墓所から赤い鳥が三つ三つ

白い鳥も三つ三つ

その他べっぴんさんが

くつはいて袴はいてすってんてんのほい

 

 

船の船頭さんにさぁるく三尺もろて

何にするかとこうやに問えば

一にたちばな 二にかきつばた

三にさがれ藤 四にししぼたん

五つみやまの千本桜 六つむらさき色よく染めて

七つなんてん 八つ山桜

九つこうやの弘法大師

十でとのごさんのおうまにめさんせ おかごのらんせ

ぜんぜがないからのうらんよ

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お手玉歌

 

お手ばたけお手ばたけ、おしかけ落としておさら

ちっさい川通れ、ちっさい川通れ、おさら

大きい川通れ、大きい川通れ、おさら

おひとつやのびんつけ、おひとつやのびんつけ、おさら

おふたつやのびんつけ、おさら

おみっつやのびんつけ、おさら

およっつやのびんつけ、おさら

(今度ぁあの、十回ほどおさら、おさらで十回、そいで)

十回落として、おさら

(で一段落、いったん返しって言う。あの、落とさんこうやったら、いったんちゅぅの、それ。今の、おひとつ落としてから。ほで、それをやったら、もう、その親玉を落としたらだめなんよ)

 

 

いっちょない、いっちょない、おさら

おひとつ落として、おひとつ落として、おさら

おふたつ落として、おさら

おみっつ落として、おさら

おみんな落として、おわら。

お手ちゃん、お手ちゃん、お手ちゃん、おさら。

お手ばさみ、お手ばさみ、お手ばさみ、おさら

おちょりんこ、おちょりんこ、おちょりんこ、おさら。

おひだぁり、おひだぁり、おおひだり。おさら。

やっちゃない、やっちゃない、やっちゃない落として、おさら。

お手っぽしょ、お手っぽしょ、お手っぽしょ、おさら。

通って、立たして、おさら。

おみんな、おみんな、おさら。

おひつじ、おひつじ、おしかけ落として、おさら。

おてばたけ、おてばたけ、おしかけ落として、おさら。

おおそで、おおそで、おしかけ落として、おさら。

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かぞえ歌、他

 

かいやかいや、かいやかいや、かいかいでんまる落としゃんな。

落とせばお金がついてくる。都土産になにもろた。

一に小貝、二にゃはさみ、三でさらさの帯もろた。

帯をもろたがまだくけぬ。くけてやんない、かかさんよ、かかさんよ。

 

いちご、人参、山椒、しいたけ、ごんぼう、むかご、なすび、山いも、こうだけ(香茸)、唐いも。

 

高野のこうやの弘法大師が、この子を抱(だ)ぁて、この粉(こ)を食ったら、この子の目へ、この粉が入った。今からちゃんと、この子を抱ぁて、この粉を食うまぁ。

 

屁をぷりぷりひったげな  観音堂がかやった

大きい地蔵泣きゃぁる   小さい地蔵笑ゃぁる

そいで観音堂 建てって  参じましょ 参じましょ

 

あのう、子供同士でけんかぁしましょう。そうすると「やぁ、腹ぁこいた、腹ぁこいた、へをこいた、お鉢鍋をぶちぬいた」いうてやりよったんよなぁ。あがぁいうてかまいよった(からかっていた)んよなぁ

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花咲じいさん

 

 おじいさんとおばあさんが一匹の犬をかわいがって、大けに(大きく)しよったいうて。そしたら、その犬が、ある日のこと、畑の隅ぃ行って、「ここ掘れワンワン、ここ掘れワンワン」いうて鳴くけぇ、おじいさんとおばあさんがなんでも不思議なことだと思うて、その畑の隅を鍬で掘ってみたら、たくさんのお金や宝物がいっぱい出よった。

 

 そいからおじいさんとおばあさんは、喜うで、犬をかわいがりよったら、隣のおじいさんが、聞いて、

「まぁ、そがぁなええ犬がおりゃぁ、ええ犬だけぇ、うちにも貸してくれぇ、貸してくれぇ」いうて、欲張りじいさんがいうた。そいから、じいさんが犬を借りていんで(帰って)、そいから、まぁ、畑の隅ぃ連れて行って、鳴きもせんに、どうのこうなぁワンワン言わして、そこを掘ってみたら、泥水やら、石やら、きしゃない(汚い)ものばっかり出た。そいでおじいさんが怒ってな。その犬をたたっ殺した。隣のおじいさんが、

「はあ、犬ぅ返してくれ」いうたら、

「うちにゃぁ、いっそ、お金も何も出やぁせんけぇ、あの、腹が立つけぇ犬は殺した」

「まあ、かわいい(かわいそうな)ことをしてくれた。やつを、ああ、その殺したのをまぁ返してくれ」いうた。

 

 そいからその犬を返してもろうて、そりょを大事に葬って、墓を建てて、その上へ一本の木を植えた。ところが、その木が早う早う、大けんなってな、今度それで臼をこしらえた。臼をこしらえて、餅をつきよったら、そしたら、餅をひとつつくたんびゅうに、またお金や宝物がたくさんでるけぇ、

「まぁ、まぁ、これは、これは」いうて喜んだ。

 

 そいで、また隣のおじいさんがそりょぅを聞いて

「その臼をかしてくれぇ」いうて、そいから臼を借って、いんで、餅をつきよったが、お金もなんも出やぁせん。土やごみや汚いものばっかりでるけぇ、またおじいさんは腹こいて、その臼を焼いてしもうた。

 隣のおじいさんが

「それを、臼を返してくれぇ」いうたら

「はぁ、ありゃぁ、何も出やぁせん。どうもこがぁもならんものばかり出るけぇ焼いた」いうた

「ほんなら、まぁ、はえ(灰)ないと(ぐらいは)あろうけぇ」というて、はえをもろうて、いんだ。

 

 そいからまぁ、家の枯れ木に、はえを蒔いたら、立派な花が咲いた。そいから、おじいさんは、とても喜うで、そいから、ある日、お殿さんがお通りになるときに

「こりゃぁ、日本一の花咲爺だ」いうて、まぁ、大きな声を出して、枯れ木に登っとった。そりょをお殿さんが聞いて、

「そりゃぁ、ええことだ。花を咲かしてみぃ」いうことになって

 そいで、はえを枯れ木へばら撒いたら、まぁ、りっぱに花が咲いてな。そしたらお殿さんが喜んで、

「まぁ、こりゃぁええ花咲じいさんだ」いうて、たいそうな褒美をもろうた。

 

 それを聞いた隣のおじいさんが、今度は、そのはえをもろうて、今度、殿さんのお通りになるときに、

「こりゃぁ、日本一の花咲爺だ」いうて、大きな声を出して、枯れ木に登っとった。

「はぁ、そうかぁ、そうかぁ、花を咲かせてみぃ」いうた。

 そいで、はえを枯れ木へばらまいたら、いっそ花は咲かんこう、殿さんの目ぇやら、鼻やら、耳やら入ってから、殿さんが、ごうぎに(たいそう)怒ってなあ。そいからとうとう、そのじいさんは打ち首におうた。いう話だぁの。

 悪いことをしちゃいけんいうことだな。

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注 : こうがい[1] 笄、男女ともに髪をかきあげるのに櫛の一種。近世女のまげに挿して飾りとする具で、金・銀・べっこう・水晶・めのうなどで作る。

    くけぬ[2] くけない、『くける』は『縫い目が表に出ないように縫う』こと